「地域社会への貢献」と「環境負荷低減」を同時にかなえた地中熱。東京・板橋区 複合介護ビル 導入事例

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株式会社イノベックス

B!
地中熱活用の高効率空調・給湯システムを導入した新築ビル「トックマルット」(地上1~4階部分)

SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資の潮流が加速する現代、企業や施設運営者にはCO₂排出量の削減・省エネルギー対策がより切実に求められています。特に介護・福祉施設のように24時間・365日稼働が前提の事業では、空調エネルギーのコストと環境負荷はそのまま経営課題に直結します。

今回ご紹介するのは、東京都板橋区で地域とともに歩んできた塩野様が建築した地下1階・地上4階建ての複合ビル「トックマルット」への導入事例です。ビルの地下1階には調剤薬局(スギ薬局)、地上1~4階にはスターツケアサービス株式会社が運営する「グループホームきらら板橋徳丸 」が入居しており、地中熱源空調システムはこのグループホーム部分で活用されています。

「地域社会への貢献」と「環境負荷の低減」という2つのビジョンを同時に叶える手段として地中熱に着目された塩野様は、弊社イノベックスに自らコンタクトを取り、導入を実現されました。
弊社の地中熱源空調システム「サーチェス®」の 導入によって省エネ性能の高い空調環境を実現したうえ、冷房時の排熱を施設の給湯熱源として活用するという複合的な省エネ効果も達成。さらには地下水(井戸水)の活用という想定を超えた付加価値まで生み出すことができました。

導入を決意されたきっかけから施工中のリアルな苦労、竣工直後の率直な感想、そしてこれからの展望まで、ビルオーナーの塩野様とイノベックス ジオサーマルトランスフォーメーション事業部長付 伊藤修司さんに詳しくお話を伺いました。

 




目次


地域社会への貢献が起点。 「環境にやさしい空調技術」を自ら10年来探し続けた

塩野様が介護施設を含む複合ビルの新築を決意したのは、高齢化が進む地域社会に貢献したいという強い想いからでした。施設の用途を決めるのと同時に、塩野様がこだわり続けたのが「環境への配慮」です。

地中熱に興味を持たれたきっかけを教えてください。

塩野様
「この地域に高齢者のための施設を作りたいという思いがあり、せっかく建てるなら地球環境にやさしい設備にしたいと考えて、いろいろ調べました。
普通の空調じゃ電気を食いすぎるし、ヒートアイランドの原因にもなる。何かいい技術がないかと探していたときに、イノベックスさんを見つけて直接電話しました。

 


塩野 誠一様/複合ビル「トックマルット」オーナー

 

伊藤
「直電で問い合わせというのは本当に珍しいことなのでよく覚えています。塩野様からは非常に細かい点まで質問いただき、地中熱について相当よく調べていらっしゃることがすぐに伝わりました。」


写真左から、イノベックス 伊藤、塩野様

 

塩野様

「サーチェス®は特許技術で、少ない熱源孔で高い性能を発揮できると知りました。都内のビルは敷地に制約がありますが、この方式なら対応できる。
また、福祉施設は24時間空調を稼働させ、給湯使用量も多いため、エネルギー削減と環境負荷低減を両立できる点も魅力的でした」

高齢化社会への貢献という施設本来の目的と、環境負荷低減という個人としての強い信念を両立できる技術を、塩野様は自ら積極的に探し続けていました。
多くのビルオーナーが設計会社や施工会社からの提案を受動的に受け取るなかで、塩野様が弊社に直接コンタクトを取られたこと自体、自ら環境問題に取り組む高い意識と地中熱への期待の表れと言えるでしょう。 

 

介護施設を選ばれた理由もお聞かせいただけますか。

塩野様
板橋区はもともと高齢者の方が多い地域で、自分が地元で何か貢献できることを長年考えていました。デイケアサービスであれば通所で利用していただけるので、地域の皆さんの生活に直接関わることができる。
そこに地中熱という環境技術が合わさったことで、「これなら自分が目指している地域貢献と環境負荷低減が、両方実現できる」と感じました。

 

車2台分のスペースしかない。 都内ならではの「用地制約」という現実





ボーリング掘削時の現場の様子

地中熱の導入を決めた塩野様でしたが、都内の立地ならではの制約が立ちはだかりました。 ボーリング(地中への熱交換井(熱源孔)掘削)に使えるスペースが、わずか駐車場2台分しか確保できなかったのです。

一般的な地中熱工法では、60kW規模のシステムに対して12〜15本の熱源孔(ボアホール)が必要とされています。駐車場2台分のスペースにそれだけの本数を掘削するのは物理的に不可能で、多くのケースでは「都内では地中熱は無理」と諦めることになります。

 

ー設計・施工業者の方々の当初の反応はいかがでしたか?

塩野様
「最初は設計業者も施工業者も「地中熱は聞いたことがない」という感じで、かなり消極的でした。むしろ否定的に近かったと思います。
設計段階で何度か地中熱を外す方向に流れそうになりましたが、そのたびに「地中熱ありきで進めてください」と押し返しました。」

伊藤
「新築ビルということもあり、建設会社や設計会社との調整は容易ではありませんでした。しかし塩野様が「地中熱システムを必ず導入する」という強い意志を持って各業者に働きかけてくださったことが、プロジェクトを前に進める大きな原動力になりました。

塩野様
「最初の問い合わせの時から細かい質問にも丁寧に答えてくださって、おかげで技術や仕組みのことがよく理解できました。
実際に工事を進める中でも細部まで丁寧に対応してくれたので、その判断は間違っていなかったと確信しています。

 

わずか3本のボーリングで都内導入を可能にした 独自特許「ヒートクラスター方式」

塩野様
「スペース的には、あの駐車場に3本掘れるかどうかが限界でした。それでできるという話を聞いたときは、正直、本当に大丈夫なのかと思いました」

その不安を払拭したのが、イノベックスが特許を取得しているヒートクラスター方式です。

「サーチェス®」は、年間を通じて15〜18℃と安定した地中熱・地下水熱を利用するヒートクラスター方式のシステムで、一般的な地中熱工法と比べて採熱能力が約5倍に達します。1本の熱源孔から水資源と熱エネルギーの両方を取り出せる点も大きな特徴です。

 

塩野様

「「普通の地中熱なら12〜15本掘らないといけないところを、3本で同じ効果が出せる技術がある」と聞いて。 それなら物理的に可能じゃないかと思いました。
イノベックスさんが実績の資料をいくつも持ってきて説明してくれたので、信頼できると判断しました。」

今回は深度100mの熱源孔を3本設置し、合計60kWの出力を確保しました。熱源孔は重耐化粧蓋を施して駐車場内に設置されており、導入後も駐車場として通常通り利用できます。ヒートポンプ2台は屋上に格納されており、外観への影響を最小限に抑えた設計となっています。

 

ヒートポンプ

  加熱56kW・冷却53kW × 2台(相互バックアップ運転可能)

熱源孔

  深度約100m × 3本(理論採熱量 合計75kW、余裕率あり)

掘削スペース

  駐車場2台分

空調対象エリア

  地上1〜4階(福祉施設の共用部

地盤特性

  谷筋地形により地下水が集まりやすい好適地

付帯設備

  冷房排熱回収用熱交換器・蓄熱槽を完備

 

空調だけにとどまらない、想定を超えた3つの省エネ効果

塩野様
「導入前、もともと私が期待していたのはあくまで「空調の省エネ」でした。しかし設計を進めるなかで、地中熱システムが空調・給湯・井戸水の3つの用途に同時活用できることが明らかになり、地中熱への期待は大きく膨らみました

 

ー空調以外の効果についてはいつ知ったのですか?

塩野様
設計の途中でイノベックスさんから「冷房の排熱をお湯に使えますよ」という話が出てきて、驚きました。うちはデイケアで入浴サービスをやっているので、お湯の使用量がとにかく多い。それが賄えるというのは、空調の省エネと同じくらい、いやそれ以上に助かる話でした。

さらに井戸水まで出るというのは全く想定外で、「地域の防災にも使えるかもしれない」という話になったときは、本当に面白いなと思いましたね



地中熱源空調システムの仕組みイメージ図(システム構成)



塩野様
「最初は地中熱で空調を省エネにできればと思っていただけなのに、給湯にも使えて、さらに水まで出てくる。いいものを作ってもらえれば、本当にお金の問題じゃないとも思えるくらいでした

補助金申請から竣工まで約8ヶ月。 想定外の壁も、チームで乗り越えた


配管接続現場の様子


2台のヒートポンプは屋上に格納されている


熱源孔は重耐・化粧蓋が施され駐車場に

プロジェクト全体の期間は約8ヶ月(2024年3月頃〜10月竣工)。弊社は助成金 申請書類の作成から始まり、地中熱工事未経験の建築会社・施工業者との工程調整、ボーリングマシン による都内での掘削施工、ヒートポンプ設置・配管接続、そして竣工後のフォローアップまで、すべての工程に並走しました。

 


 ■ 東京都再生可能エネルギー熱利用補助金の活用
  • 総工事費約7,000万円に対し、実質助成金充当率55%(※1)
  • 地中熱採用による実質自己負担増分:約1,200万円(※2)
  • 申請書類作成・行政との窓口対応・工事スケジュール管理を弊社が一括サポート

 ※1:助成対象外工事を含む総工事費に対する比率。制度上の助成率は助成対象工事費の2分の1~3分の2
 ※2:自己負担分約3,200万円から通常の空調設備の場合の概算工事費2,000万円を差し引いた金額

 

ー施工中に苦労されたことはありましたか?

塩野様
「狭小地の施工で機械の取り回しがキツかったため 、時間がかかりましたね。あとは設計の段階で、天井の高さが取れずにダクト空調を断念したのは少し残念でしたが……それでも地中熱の導入は諦めませんでした。

伊藤
当初は熱源孔4本の計画でしたが、地下水が十分に確保でき、熱効率も良好だったため3本で対応できました。また、敷地前面が道路のため掘削機の搬入を心配していましたが、ボーリングマシン での施工が可能となり、工期短縮につながりました。
それと、建築工事と地中熱工事のスケジュールを合わせるのが想像以上に大変で、総勢40〜50名が関わる現場だけに非常に繊細な調整が続きました。なんとか工期内に完了でき、安心しました。

塩野様
「そのあたりはイノベックスさんたちが施工業者と細かく調整してくれたので、私自身が業者同士のやり取りに巻き込まれることはほとんどありませんでした。その対応があったから、工期内に無事完了できたと思っています。」

「省エネ=我慢」ではない。 使えば使うほど、環境にやさしいシステムへ


地中熱空調で快適な空間を作っている居室


1階の片隅には井戸水の排水栓があり、夏場の水まきや送迎者の洗車、スロープの融雪、防災などに活用可能

 

ー竣工後、実際に稼働させてみた印象はいかがですか?

塩野様
試運転の段階から電力の消費が落ち着いているなという実感はあります。入浴サービスでお湯の消費がかなり多くなるはずなのですが、冷房の排熱をそこに使えるという仕組みが実際に動いているのを見て、これは期待できると感じました。省エネというと何かを我慢するイメージがあったのですが、地中熱は使えば使うほど環境にやさしいというのが、私のイメージとまったく逆で(笑)。それが一番おもしろかったですね。

その後、施設は2025年2月1日にオープンを迎えました。24時間稼働が始まったことで、地中熱システムの真価はいよいよ本格的に発揮されていきます。


 ■ 期待される主な導入効果(設計値・試算ベース)
  • 空調エネルギーコストの削減:地上1〜4階の共用部の空調を地中熱でほぼ全量賄い、24時間稼働の電力コストを削減
  • 冷房排熱の給湯転用:デイケア入浴サービス用の大量給湯コストを低減(夏季に特に効果大)。ボイラ燃料・電力使用量も削減
  • CO₂排出量の削減:再生可能エネルギー利用によるScope 2削減。ESGレポートへの反映にも貢献
  • 投資回収期間:24時間稼働という高稼働率により、試算上4〜5年での回収が見込まれる
  • 地域への付加価値:井戸水を使った防災・地域開放水源としての社会貢献も実現

 

室外機不要・設備は屋上に集約。長期運用を見据えた設計

熱源孔は駐車場内に平坦に仕上げられており、ヒートポンプ2台は屋上に格納されています。室外機が不要なため外観への影響が最小限で、建物のデザインや周辺環境を損ないません。

また2台構成による相互バックアップ運転が可能なため、一方が停止した場合でも空調・給湯を止めることなく継続でき、24時間稼働施設ならではの高い信頼性を確保しています。地中に設置するシステムは地震にも強く、これまでの導入先で大きなトラブルは発生していません。

 

地域のために作った施設を、もっと多くの人に知ってほしい




屋上に設置している農園スペース


ー施設として大切にされていることを教えていただけますか。

塩野様
とにかく、利用してくださる方に気持ちよく過ごしていただきたいというのが一番です。グループホームは、ご高齢の方にとって生活の場そのものです。
空調が快適であること、空気がきれいであること、そういった「当たり前の快適さ」がずっと続くようにしたい。地中熱はその安定感という意味でも、私の施設のコンセプトにぴったり合っています。

 

ー今後の展望についてはいかがでしょうか?

塩野様
まずはこの施設をしっかり地域に根付かせたいと思っています。地中熱の良さは使えば使うほど発揮されるものなので、長期で見ていきたい。将来的には、別の物件でも条件が合えばまた導入を検討したいですね。地中熱は一度知ったら、もう普通の空調には戻れないと思っています(笑)
あと、せっかく井戸水が出るので、地域の防災活動にも役立てる仕組みをこれから考えていきたいです。

徳嶋工業様の介護施設「グループホーム きらら(板橋徳丸)」「小規模多機能 きらら(板橋徳丸)」は現在(本記事公開時点)オープン直後の段階にあります。
地域の高齢者が通いやすく、環境にも配慮された空間として、地元板橋区での注目を集めています。見学を希望される方は施設に直接お問い合わせください。

長時間稼働施設に適した地中熱システム

他にはどのような施設が地中熱利用に向いていると思いますか?

塩野様
24時間稼働が必要な場所はおすすめですね。福祉施設や医療機関、24時間営業の店舗など、空調・給湯を長時間使用する施設では特に高い効果が期待できるのではないでしょうか

 

ー導入後のメンテナンスやサポート体制はいかがでしょうか?

塩野様
まだ施設のオープン直後ですが、今後は24時間稼働が続きますので、万が一の故障時には迅速な対応を期待しています。

伊藤
「こちらの施設では、地中に設置するシステムのため地震への耐性も高く、故障は極めて少ないのが特徴です。多くの導入先では年2回(春・秋)の定期メンテナンスを実施しており、これまで大きなトラブルは発生していません。稼働後もしっかりサポートしてまいります。」

おわりに

塩野様
「地中熱源空調温水システムの導入は、単なる省エネ設備の話ではないと考えています。環境にやさしく、地域への貢献、入所者の快適性、トータルコスト等、ひとつの地中熱利用システムで実現できるのは、他にはなかなかない強みではないでしょうか。持続可能な経営と地域への貢献を両立したいとお考えの皆様に、ぜひ一度体験していただきたいシステムです。

伊藤
塩野様との取り組みを通じて、地中熱源空調システムは単なる設備ではなく、お客様のビジョンや経営戦略の一部として機能するものだと改めて実感しました。今回のように、空調・給湯・井戸水という複合的な活用が実現できたのは、塩野様が最初から明確なビジョンをお持ちだったからこそでもあります。
都内という制約の多い環境でも、適地を見つけ、助成金 を活用し、施工会社と連携しながら、8ヶ月でプロジェクトを完遂できたことは私たちにとっても大きな自信になりました。今後もより多くの施設・企業の皆様に、地中熱の可能性を実感していただけるよう、技術開発とサポート体制の充実に努めてまいります。




介護施設「グループホーム きらら(板橋徳丸)」「小規模多機能 きらら(板橋徳丸)」のエントランス

※インタビューは施設竣工直後(2026年1月)に実施しました。掲載内容は取材時点の情報に基づきます。導入効果は施設の立地・稼働条件・補助金制度等により異なります。




地中熱源空調システムの活用事例集はこちら



地中熱の効果や、これまでの活用事例及び、導入に至るまでのプロセス、自社工場の活用事例などについてわかりやすく解説しています。
 
  • 工場の冷房が無い、あるいは暑くて社員の体調管理が課題
  • 環境に配慮した機器の導入を検討している
  • 空調で施設園芸ハウスの栽培環境を最適化したい
  • トマトやイチゴの収穫期間を伸ばしたい
  • 具体的にどのような所で導入されているの?

といったよくあるお悩みに回答しています。

  • 環境に配慮しながら十分なエネルギーを確保して事業の拡充を図りたい
  • 工場から排出される温熱・冷熱を再利用したい
  • エネルギーコストやCO2排出量を削減したい
  • SDGsの取り組みを進めたい
  • 空調システムのコストを削減したい

といったご担当者さまはぜひご一読ください。

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